一般社団法人 深谷寄居医師会からの要望書

更新日:2023年03月27日

帯状疱疹予防ワクチン、おたふくかぜワクチン接種への公費助成についての要望書
陳情者名 一般社団法人 深谷寄居医師会
受付日 令和4年9月1日
陳情内容

帯状疱疹は、子供の頃に感染する「水ぼうそう」ウイルスが、治癒後も体の感覚神経に潜伏し、大人によって、加齢や疲労によるストレス、基礎疾患や癌、リウマチなどの治療で使用される免疫抑制剤等により、その人の免疫力が低下することで、ウイルスが再活性化し発症する病気で、日本での疫学調査では、働き盛りの五十歳を過ぎた頃から急増し、80歳までに3人に一人が発症(生涯発症率は約30%と推計)する、ほぼ全ての日本人が発症のリスクを持っている疾患です。最近では、50歳以上を対象とした、COVID-19感染と帯状疱疹発症の関係性が注目されており、COVID-19感染患者での帯状疱疹の発症率は、非感染者よりも15%高く、また、その重症度が上がり入院患者における帯状疱疹の発症率は、非感染者よりも21%も高くなることが報告されています。この事は、自身の免疫力の低下により帯状疱疹の発症リスクが既に高い50歳以上を含む高齢者において、COVID-19感染と帯状疱疹発症リスクの増加を関連付ける初めてのエビデンスであり、COVID-19や帯状疱疹のようなワクチンで予防可能な疾患リスクを有する高齢者の健康を守るために、ワクチン接種などの予防対策が重要であることを示しています。
また、帯状疱疹は、皮膚上に現れる水ぶくれを伴う赤い発疹と、眠れないほどの激しい痛みを伴う疾患ですが、その合併症や後遺症も問題視されております。特に、ウイルスが神経を大きく傷つけてしまうと、皮膚の症状が治った後も痛みが続くことがあり、三カ月以上続く痛みは帯状疱疹後神経痛と呼ばれて、帯状疱疹を発症した人の約2割程度の方が、その様な後遺症が残ると言われています。その痛みは、「電気が走るような痛み」「焼けるような痛み」と表現され、日常生活に深刻な影響を及ぼすとされています。
加えて、その様な帯状疱疹や合併症、後遺症に係る医療費に関して、薬剤費と治療費を合わせた直接医療費は、1人当たり、平均62,094円とされております。特に、帯状疱疹後神経痛の後遺症が残った場合は、1人当たり、平均127,079円とも言われており、日本において、年間にかかる直接医療費は毎年260億円にも上るとされています。また、直接医療費の他にも、帯状疱疹による欠勤や、痛みによる労働生産性の低下による国内の損失は、毎年47億円と推計されています。
この様な状況において、日本では2016年に乾燥弱毒性水痘ワクチン(製品名:ビケン)が50歳以上の方に対する帯状疱疹の予防で可能となり、令和2年1月には乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(製品名:シングリックス)が発売され、発症リスクの高い、より幅広い医療ニーズに対応できる環境が整ってきています。よって、高齢者の健康維持を推進し、かかる医療費の抑制、労働生産性の向上を図るため、自治体における対策を早急に行うよう要望します。

おたふくかぜは流行性耳下腺炎とも呼ばれ、乳幼児の感染症の中では主要な病原体です。耳下腺炎が良く知られていますが、顎下炎の症状が強いこともあり、精巣炎、卵巣炎、難聴、無菌性髄膜炎、脳炎などを合併する疾患であることも知られています。
国内あるいは全米の調査で、難聴の合併症の頻度は数百人に1人に及ぶことが確認されています。いったん難聴を発症すると治療による回復が困難であり永続的な後遺症となります。難聴については、片側性が多いこと、また不顕性感染で会っても発症すること、子育て世代など成人になってからの発症でも合併すること等が知られております。
おたふくかぜワクチンはいまだに定期接種化されておりませんが、助成制度を持つ自治体は全国に数多くあり、近隣の寄居町においても数年前から助成制度が行われております。深谷市には助成制度がありませんが、自費で接種する任意接種により多くの子供たちがおたふくかぜワクチン接種を行っています。しかし、経済的な問題から、接種を断念していること保護者のかたがおられる可能性は忘れてはなりません。
子供たちを対象として、おたふくかぜワクチンの公費助成を是非ともお願いしたく、ここに要望いたします。

【回答】
新型コロナウイルスワクチン接種をはじめ、本市の保健衛生行政につきまして、日頃から多大なご理解、ご協力を賜り深く感謝申し上げます。
帯状疱疹予防ワクチン及びおたふくかぜワクチン接種につきましては、予防接種法に基づく国が定める定期接種ではなく、個人が接種を選択する任意接種でありますことから、本市におきましては、現在、接種費用の助成制度は設けておりません。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は社会生活に多大な影響を及ぼし、健康面におきましても、生活様式の著しい変化等による免疫力の低下により、様々な疾患の発症に影響し、なかでも帯状疱疹の発症リスクを高めることがあると伺っております。
このような平時とは異なる危機的状況のなか、おたふくかぜにおいてもおよそ4年から6年の周期で流行を繰り返していることや、罹患による重篤な合併症の危険性、また新型コロナウイルス感染症の影響との関連等にも注視する必要があると考えております。
こうしたことを踏まえ、ご要望をいただきました2つの感染症につきまして、ワクチンで防ぎうる感染症として、医師会の皆さまの専門的知見をいただきながら、ワクチン接種の公費助成制度の構築に向けて検討してまいりたいと存じますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。

(表記を一部変更して掲載しております)
(資料の掲載は省略させていただきます)
(令和4年9月29日)

担当課 保健センター

 

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