尾高ゆう

更新日:2014年3月3日

尾高ゆう(1858頃-1923)

尾高ゆうの写真

尾高ゆうは、官営富岡製糸場の第1号の伝習工女として操業に携わり、日本の近代化に大きく貢献しました。
ゆうは、武蔵国榛沢郡下手計村(現在の深谷市下手計)出身の尾高惇忠の娘として、安政5年(1858)ごろに生まれました。父の惇忠は、地元でも有名な学者、教育者であり、渋沢栄一翁も惇忠に学ぶほど、深く尊敬されていました。
惇忠は、明治3年に、官営富岡製糸場長となります。富岡製糸場の洋式技術の導入は、当時、富国強兵を図る明治政府の命運をかけた大事業であったため、惇忠は、この総責任者として建設と運営に全力で取り組みます。
しかし、操業を支える工女の募集難にあいます。それは、工場の外国人技術者たちが飲むワインを生き血と思い、女性たちの間で、工場では血を採られる、脂をしぼられるという噂が流れていたためでした。
驚いた惇忠は、それが噂であることを証明するために、また、伝習工女の手本とするために、自 らの娘ゆうを第1号の伝習工女にしたと考えます。
そのとき、14歳だったゆうは、父の意をくみとり、新しい技術を身に着け、パイオニアとなることに希望と誇りを抱いて富岡に赴いたのです。
ゆうの勇気ある決断は、近隣に伝え渡り、感銘した地元の女性たちは、連れ立って次々と伝習工女に志願し始めます。
こうして、富岡製糸場は操業を開始することができたのです。ここで技術を得た女性たちは、製糸技術を各地に伝え、その後の日本の近代産業の発展を築いたのです。

ゆうは女工哀史なの?

「工女」と聞くと、「ああ野麦峠」などの女工哀史を思い浮かべてしまいませんか?
しかし、明治初期の工女は「伝習工女」といって、技術の伝習を行うフランス人教婦から技術を学び、最先端の技術を学ぶパイオニアでした。
つまり、伝習工女は、研修期間を終え帰郷すると、その技術を地元に伝習する指導者となったのです。つまり、生活苦から工女になったわけではありませんでした。
このため、集まった伝習工女は、士族など地方の名望家の子女が多数を占めており、なかには、公家・華族の姫までいたので、地域の人は、伝習工女のことを「糸姫」と呼んだといいます。また、工場での暮らしは、寄宿舎に入り、日曜日は休日とし、夜業は禁止されるなど、労働条件にも配慮され、演芸や祭りなどを楽しんだ、たいへん豊かで規律規範の正しいものでした。
何よりゆう自身が「自宅で養蚕をしていて、機械の仕事も楽しくできた」と語っているように、「自由で気楽」でありながら、最先端の技術を身に着け、そして指導者になるという、パイオニアとしての誇りも高く研修作業に臨んでいました。

深谷・埼玉の工女たち

明治政府の命運をかけた製糸工場の操業に当たり、度重なる工女の募集にも、西洋人技師は恐ろしいという噂のためにいっこうに応募がありませんでした。しかし、当時14歳のゆうの志願は、県内外に大きな反響をもたらしました。
地元深谷をはじめ近隣の市町や群馬などから、ゆうに感銘した多くの工女が応募したのです。その結果、ようやく製糸工場は必要な工女を集めることができ、操業にこぎつけることができました。
また工女の中には、技術を収得した後、郷里に帰って、各地の製糸工業の発展に尽くした者も多くいました。
ゆうの決断は、明治期の日本の産業発展に大きな貢献をしたといえるのです。

富岡製糸場長・尾高惇忠

天保元年(1830)に下手計に生まれた尾高惇忠は、幼い時から学問が良くでき、いとこの渋沢栄一に「論語」などを教えるほどでした。
明治3年に官営富岡製糸場長になり、まごごろを尽くすことは何よりも勝るという意味である「至誠如神(=至誠は神の如し)」(※「至誠」とはまごごろのこと)を信条に、製糸場内の規律の維持や風紀の乱れに注意をはらうなど、日本最初の官営工場として他の模範になるように心掛けた経営を行いました。
伝習工女に対しては、人間性を重んじる教育を行い、「繰婦(工女)は兵隊に勝る」と語ったように、女性の労働力は決して男性に劣るものではないと奨励していました。
このような気風が、伝習工女たちの技術に反映し、近代産業の礎を築いていったのです。

富岡製糸工場の県内出身工女

富岡製糸工場の県内出身工女
市町村 工女数
深谷市 21
熊谷市 3
妻沼町 2
寄居町 15
江南町 6
大里村 2
本庄市 3
上里町 1
羽生市 3
秩父市 1
小鹿野町 23
吉田町 5
東松山市 4
小川町 34
嵐山町 1
鳩山町 1
川島町 1
坂戸市 6
鴻巣市 8
吹上町 2
桶川市 5
浦和市 2
不明 1
士族<前橋藩<松山>忍藩<行田>など> 85
合計 235

埼玉県「さいたま女性の歩み」(平成5年)より

尾高ゆうの年表

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