荒地のレストラン「ヤブガラシ」
侵食を開始してしばらく経った頃の状態。これをペリペリ~と剝がすのがちょっと快感でもある。
ふだん注目することはまずないけれど、意外ときれいな・かわいい・面白い花を咲かせている草花はたくさんあります。どうしても人は、お金をかけて育て(られ)た花や、特に高額な訳ではなくとも身近によく咲いていて、きれいなものだという共通認識があらかじめある花(スミレとかコスモスとか)にばかり目を向けがちです。しかし「雑草」とひとまとめに呼ばれ、しばしば厄介者扱いされがちな草でも、なかなか見捨てがたい花をつけているものが多いのです。ここではそんな厄介者の代表格、ヤブガラシの花を見てみます。
そもそも花が咲くほどヤブガラシを放置しておくのは、あまり褒められたことではないかもしれません。いくら花が面白くても、所詮名前の通りの「藪枯らし」。どんな草花や樹木の上でもお構いなしに乗っかってはびこり、しまいには光合成をできなくして枯らしてしまうからです。まだ伸び始めのヤブガラシに花はありません。つるを存分に這わせて、もともと下にあった木や植え込みを隠し始めるころ、稲妻のような形の枝を伸ばし、その先に小花を無数につけるのです。
咲き始めはオレンジ色です(上の写真)。この段階では花盤(かばん)と呼ばれる中央のステージ部分の周りにおしべが四本生えています。そして外側に四枚の花弁がついています。しかしじきおしべと花弁は落ち、中央にあるめしべが伸びると、今度は花盤がピンクに変色するという仕組み(下の写真)になっています。
つやつや光沢を帯びているオレンジやピンクの花盤ですが、もちろんこれは蜜です。人の指では花が小さすぎて感触が分りませんが、べたべたしているのではないでしょうか。この蜜を目当てに、下の写真のように様々な虫が集まってくるので、人には嫌われるヤブガラシも、小さな世界では人気のレストラン、かもしれません。しかしこれだけ虫が好むなら人間にも美味しいはず。あの小ささからすれば、何億、何十億とヤブガラシの花を集めれば、「ヤブガラシジャム」も夢ではないはず!?などと夢は膨らみますが、ヤブガラシの花を愛する顔ぶれにはスズメバチもいるとのことで、やはり花を咲かせる前に除去した方が賢明でしょう。
アリ
カナブン
テントウムシ
ハエ
ハチ
更新日:2025年09月24日