ゲンノショウコの種飛ばし
紅色(参考書によって赤、赤紫、紅紫とも)は関西に多いとされる。
白色は関東に多いとされる。
植物にとって一番大切な仕事は種を作ること。いくら花が咲いても種ができなければ子孫を伝えられません。しかし種が出来てもまだやることがあります。その種をどう地面まで持っていくのか?種が地面に着地して、初めて子孫を伝えられる可能性が生まれるからです。書くまでもない当たり前のことですが、実はここに、植物独自の様々な工夫が凝らされており、奥深い世界が広がっています。ここではメディカルガーデンに咲く「ゲンノショウコ」のユニークな種運びのやり方を見ていきます。
ゲンノショウコは「日本三大薬草」と呼ばれる古くから知られる薬草の一つです。特に下痢止めや整腸薬として使われ、葉を日干しして煎じて飲むとすぐ効果が出ることから、「現に効いた証拠」=「ゲンノショウコ」と呼ばれるようになりました。「タチマチグサ」、「イシャイラズ」の異名もあることから、広く民間薬として重宝されてきたことが分かります。

このゲンノショウコ、白とピンク(本によっては、紅色や赤紫などと書かれていることもありますの二色ありますが、花の終わった後になかなかユニークな展開を見せるのです。写真の番号順に追って行くと、
1.花が散ると中央の種となる部分がだんだん伸びてきます。
2.なおも伸びて、ロケットのようになります。
3.時間が経つと、ロケット部分が黒く変色し、その足元に丸い黄土色の部分を四つ蓄えているのが分かります。この中に種子が入っています。
4.一番上の部分を基点に、ロケットの足元が上に向かって跳ね上がり、この瞬間に種が外に飛ばされるのです。中が空になった種袋はそのまま残ります。
なぜこんな手の込んだやり方をするのか、といえば、遠くまで種を飛ばせばそれだけ自分たちの栄える領域が増えるから、ということになるでしょう。実際、メディカルガーデンのゲンノショウコは元々一つのエリアの一画だけにあり、他の草と共存していたのですが、今では種飛ばしが功を奏してそのエリアのほぼ全体を占めるようになっています。かつては、畑の畦を埋め尽くすように咲いている光景が珍しくなかったそうです。
ちなみに、4.の形から、「ミコシグサ」という名前もあります。頂点から種袋に至る跳ね上がった曲線が神輿の屋根に見えたことからの連想でしょう。植物には一人でいくつもの名前を持つものがよくありますが、それだけ昔から人に親しまれ、人の生活や日常と結びついてきたことを物語っています。
更新日:2025年09月17日